20180323

街に出来たてのチーズを

  フレッシュチーズのお店


店内で作ったり、フレッシュチーズを提供するお店が続々と増えています。


昨秋、横浜に大手乳業メーカーのタカナシさんが運営するMilk Restaurant。先週には大阪からのgood spoonという店舗が同じく横浜に。そして、あのDean& Dealucaさんが運営する店舗が来週日比谷ミッドタウンにオープンします。


銀座、お台場(大阪に本店)や東中野(大阪に本社)にもフレッシュチーズを謳った店舗があります。


こうしてどんどんと店舗が増えていくことに、当初は焦りを感じていましたが、今は考え方を変えています。


  街に出来たてのチーズを


僕たちは2012年「街に出来たてのチーズを」をコンセプトに渋谷の地に店をオープンしました。自身が15年ほど前にイタリアで食べた出来たてのモッツァレラやリコッタに感動したのがきっかけです。


オープン前、飲食の経営者の先輩方に相談に行っても、「フレッシュチーズだけでしょ、ワインに合わないよ、ダメダメ」なんて言われたり、「味がうすいからね。」「チーズだけで売れないよ。」なんても言われたりしたものです。


ならば、どのようにすれば美味しいチーズを提供できるのか、より多くの人に食べて頂けるかを掘り下げて考えていきました。多くの人に知っていただくため、SHIBUYAという店名をつけたり、ガラス張りにしたり、練りたて体験と称したチーズ作りイベントを沢山行ってきました。


当時の僕は、新しい価値を提供し、店を増やすことで更に新しい価値を提供できると考えていました。
けれども、オープンしてチーズづくりに向き合うことで、店を増やすことよりも、美味しいチーズをつくるという食に携わる者として食や素材に向き合い、より良いものを作り上げていくという方向に変わっていきました。


(とはいえ、他に誰もやっていないことをやっていくという意識は常にあり、その中で日本にはそれほど広まっていなかったブッラータなどの開発も行っていきました。)


当初の目標であった「街に出来たてのチーズを」というコンセプトは、多くの飲食業の方々のおかげで広まっています。


ただ、やはり本当に美味しいものを食べて欲しい、という願いはあります。美味しいものを提供する義務がメーカーや飲食店にはあると考えます。


僕たちはフロンティアとしてこれらの流れを決して流行り廃りの浮ついたものにさせず、根付かせていかねばなりません。


日本のチーズの消費量はフランスの1/10。まだまだ潜在需要はあるはずです。


パンも日本ワインも本当に多種多様で美味しくなっている。


僕たちは今後も新しい価値を提供し、皆さんに選ばれて食べていけるように日々美味しい商品を作り続けていきます。

20180129

TRUST FACTOR / ポール J ザック

年末年始に読んだ本がとてもよかった。
組織をよくするものは「信頼」であることを科学的アプローチで書かれた本。
内省しながら、また未来を描きながら読み進めた本。
メモ

問い:成功をおさめる組織と、そうでない組織の違いは?
答え:「信頼の文化」が醸造されているか否か

信頼を実現する8つの要素

  • Ovation オベーション
  • eXpectation 期待
  • Yield 委任
  • Transfer 委譲
  • Openness オープン化
  • Caring 思いやり
  • Invest 投資
  • Natural 自然体
委任は従業員に対して選択の権利を与えます。これは、技術革新に必要な要素です。同時に、ミスをすることを認めることでもあります。(p.130)

委譲を実現する1つの方法に「ジョブ・クラフティング」があります。従業員に作業を割り当てるのではなく、各自がやりたいことを軸として仕事を自ら設計してもらうのです。(p.157)

「1人ひとりが成功するためには、チームが一体となって目標を達成しなければならない」このように、チームのメンバーが支え合う関係があれば、「委譲」の取り組みに効果的に参加を促すことができます。(p.167)

ピーター・ドラッカーは次のように話します。「現代の組織は、上司と部下の組織ではない。それはチームである。」(p.169)

思いやりのTips
  1. かけがえのない個人として受け入れる
  2. 同僚同士の交流を促す
  3. 互いに助け合う
  4. 長期休暇制度を取り入れる
  5. 小さな親切を実践する
「自然体」のリーダーは自らの弱さを受け入れ、それを隠し立てしません。それは強さの裏返しでもあります。なぜなら、他社に対する優位性を誇示するのではなく、チームワークを大切にしているというメッセージだからです。(p.272)

JOY=TRUST × PURPOSE
喜びは信頼と目標意識から生まれます。(p.295)

20170711

社員合宿

社員合宿を行いました。
といっても、SHIBUYA店から徒歩10分の国立オリンピックセンターにて。

オープン後の少人数のときは想いや理念を直接話せていました。もしくは軽くご飯のときなどにも。


しかし、忙しくなるにつれそういった時間を取れず、疎かになっていきました。
アイドリングタイムがなく、また早朝からチーズを仕込むスタッフと夜まで営業する店舗スタッフがいるという状況が一緒に何かをすることの阻害要因でした。


しかし経営者の方との話などで、それではいけない、と思い毎月末の日曜は店を閉めて1~2時間、社員にあつまってもらい当月の振り返りをしたり、ワインやチーズの勉強会をする機会を設けてきました。


そして、5年目を迎えた機会に普段の1,2時間の社員ミーティングでは話し切れないことを
話したく社員合宿を行ったという経緯です。


昨年も計画していたのですが、私のゆとりがなく、ようやく会社としての体制が整ってきた今、過去を振り返る時間、自分たちの弱み強み、やってほしいこと、経営理念などを改めて伝えました。


もっとゲームをしたり、皆に話す場を作りたかった。
など反省点もありますが、時間を共有することで伝わったことはあったのでないかとは思います。




20170704

ピッツァの上にのるモッツァレラ

  ピッツァのモッツァレラ事情


僕はもともとナポリピッツァの職人でした。

幼少期からピッツァ好き、そしてチーズ大好き。
料理人に憧れていた高校時代を経て、大学在学中の2004年バックパッカーでナポリを訪れた際に、現地で修行をしている日本人に感銘をうけ、飛び込みで教えてもらいました。

ピッツァに携わるうちに、やはりチーズをやりたいという気持ちが強くなり2012年にCHEESE STANDをオープンしました。

当初の企画書には卸事業の柱として卸先にピッツェリアを挙げていました。ナポリピッツァのマーケットがどんどんと大きくなるから、モッツァレラもどんどんと売れるだろうとの目論見があったのです。


ベトナムの同業の経営者の方はこういっています。
「イタリアの輸入するチーズは高い。自分たちで作るチーズは半額以上でできる。マーケットが大きい」

しかし、僕たちは逆。

日本のナポリピッツァの広がりとともに、輸入チーズの価格は徐々に下がっていきます。技術革新もあり、安価な冷凍のものや低水分のものも出回ってきました。大量に作れば生産コストは低くなるため輸入したチーズの方が安いのです。

欧州の2017年2月の平均入荷生乳取引価格は1kg当たり40.74円。(出典「乳業ジャーナル 2017年5月号」)とても太刀打ちができません。

つまり、輸入したチーズのほうが安く、また加熱することでフレッシュである優位性はそれほどなく、ピッツェリアの方からすると僕たちのチーズを使うメリットが少なくなります。そりゃそうだ。

そのため、値段ではなく自分たちらしさを出して選んでいただけるよう5年間ブラッシュアップしてまいりました。

  お取引様


そんななかでも最近のCHEF's Voiceに登場いただいた三河安城のPIZZA PAZZAの河合さん。

とても熱く、芯のある方です。

ピッツェリアがどこも同じ小麦粉を使い、同じモッツァレラを使っている。それだったら、他店と違い本当に美味しいものを使いたい。と言ってくださり、僕たちのチーズを使ってくださっています。

加熱すると冷めやすい、硬いなどと何度も何度もやり取りし改良を重ねてやってきました。

先日、比較して食べさせていただいたところ、僕たちのモッツァレラがのったピッツァは、自分で言うのも憚られますが水牛のモッツァレラにもひけをとらないナポリピッツァになっていました。ミルキーでコクがある。





感動です。そしてもっつぁもっと多くの人に食べていただきたい!と感じました。

ナポリピッツァの皆様、CHEESE STANDのモッツァレラをご贔屓に。

20170525

生産者・お取引先に会いに行くということ

飲食業に関わっていると、当たり前だけど、食材というものに触れることになります。



  1. 食材には生産者がいます。
  2. また僕たちのように1次加工をするメーカーもいます。
  3. そしてその食材を使用する料理人やお店という(メーカーとの)お取引さまがいます。


僕たちはメーカーでもあり、料理人でもあるため、また食物販を行っているため、普通の飲食業よりも多くの方と知り合うことができます。

その方々がどのような考えをもって、どのような現場で作っているのか、どんな想いでチーズを使用していただいているのかを直に感じたく、飲食業に携わってから現場に直接足を運ぶことが多いです。


ネットなどで生産者さんやお店の情報は得られるけれども、五感でその情報を感じ、その方々と一緒に時間を共有し、想いなり考えを聞くことが僕たちメーカーの立場として、もしくは料理をするものの糧となると考えています。


今回、島根〜岡山〜徳島 また昨日、スタッフを連れて千葉県へ行ってきましたが、とても学ぶものが多い視察となりました。


木頭ゆずの地域。きれいな川

ゆずの木の棘


広島市南区のセレクトショップVETTAさん

素敵な食材の中にCHEESE STANDのチーズも販売していただいています
VETTAさんご夫婦

岡山市哲多町のtettaさんへ
このパンダは畑を開墾しているときにでてきたものとのことです

ワイナリーを見学させていただきました

CHEESE STANDのチーズもオンメニュー


木次乳業

山地酪農・急な斜面

ゆずの葉の形状
千葉県・耕す

鶏もいきいきと

銚子・飯森農園

耕す、飯森苺農園については詳しくはCHEESE STANDのブログをご覧ください。

生産者を訪ねて 〜耕す。木更津農場〜
http://blog.cheese-stand.com/2017/05/blog-post_31.html

生産者を訪ねて 〜飯森苺農園〜
http://blog.cheese-stand.com/2017/05/blog-post.html


そして翌日スタッフからのメール
 昨日は貴重な体験ありがとうございました。
耕すさん、飯森いちご農園さんの思いを知ることで、食材を新鮮のまま美味しい状態で、お客様へ提供しようという気持ちが高まりました!
農家さんの思いを無駄にしないように、今後も食材を大切にしていきます。

いい言葉。こういう想いに立ち返ることができるのが生産者さんに会いに行く理由なんだろうなぁと改めて感じました。

20170303

ブランディングとマーケティング

今回の日経ビジネス ・中川政七商店社長の中川政七さんの話が現在もやもやしていてすっきりしたことがあったのでメモ。
そもそも私が「マーケティング」ではなく「ブランディング」という言葉を使うには理由があります。大まかにいえば、マーケティングは市場調査を基に商品を企画していくこと。調査には投資が必要です。中小企業が大手に勝てる可能性は低いでしょう。ブランディングも最終的に商品に落とし込まれますが、出発点はどちらかというと市場ではなく自分にあります。「自分がどうしたいか」「どういう商品を作りたいか」に力点を置いているのです。(『日経ビジネス No.1880「超常識の発想法」)』
目から鱗でした。

そうだ、僕らはブランディングをしているんだ
彼らはマーケティングをしているんだ、と。

他にもメモ

中川政七流、ブランドの作り方
  • まず「自分たちは何者か」を考え、ブランドのセグメントを決める
  • 流れるように説明できる「物語」を核に商品を企画する
  • 社長や社員、店員が商品について同じように説明できるようにトレーニングする


社員をサーフィンにいかせよう/イヴォン・シュイナード

Management By Absence(不在時による経営)(p.5)

こちらが助言を求めさえすればー何も知らないことを認めさえすればー熱心に手を差し伸べてくれるものです。そんなふうにして、私は会社を築いてきました。実のところ、イヴォンの会社に対するビジョンと目標を通訳していたに過ぎないのです。(p.60)

自らの責任と金融債務についてじっくり考えた結果、ふいに、自分が企業家であり、おそらくこれから長い間、企業家でありつづけなくてはならないことを悟った。また、このゲームに勝つには、真摯な姿勢で取り組む必要があることも。(p.61)

「企業家を理解したいなら、非行少年を観察せよ」という言葉がある。非行少年は行動でもって「こんなの、くだらねえ。おれはおれのやり方でやる」と言っている。(p.61)

私たちは、コントロールできなくなった成長が、これまで会社を成功に導いてくれた価値観を危険に晒しているのだと気づいていた。こうした価値観は、紋切り型の答えを提供するハウツーものの経営入門書には記されていない。自分たちが常に正しい疑問を抱き、正しい答えを見つけられるよう、哲学的で想像力をかきたてるガイドとなるものが必要だ。(p.97)

(私たちの価値観より)

  • 最大の注意を払うべき対象は、製品の品質である。優れた品質とは、耐久性があり、天然資源(原材料、一次エネルギー、輸送など)の利用を最小限に抑え、多機能で飽きがこず、用途に最適であることから生じる美がそなわっていること。一時的な流行は、断じて企業価値観ではない。
  • 取締役会も経営陣も、調和の取れた共同体は持続可能な環境の一部であることを肝に銘じる。一人一人が共同体に欠かせない要素であり、その共同体には従業員も、居住する地域の社会も、納入業者や顧客も含まれる。自分たちがこれらすべての関係先に対して責任を追っている事を認識し、全般の利益を念頭に置いて決定を下すものとする。また、当社と同じ基本的価値観を持つものを雇う一方で、文化的、倫理的多様性は保っていく。
  • 第一の目標ではないことをわきまえた上で、ビジネスを通じて利益を追求する。ただし、成長及び拡大は、当社の本質的な価値感ではない。
  • 社内のあり方についていえば、経営幹部は一つにまとまって行動し、透明性を最大限に保つ。その一環として「オープンブック」方針をとり、通常の個人のプライバシーや「業務上の秘密」を冒さない範囲で、従業員が意思決定に参画しやすいようにする。企業活動のあらゆる階層において、ざっくばらんな意見交換、協力的な雰囲気、できる限りの簡素化を促すと同時に、活力および革新性も求めていく。(p.99)
また、危険を伴うスポーツの経験を通じて、もう一つ別の教訓も得ていた。ー決して限界を超えないこと。高みを目指して進むとき、崖の縁にとどまっている間は命がある。だが、それを超えてはならない。自分に正直に、自分の能力と限界を知り、自分の器の範囲内で生きよ。(p.101)

イコロイ族は、意思決定の過程において七世代先の子孫のことを常に考慮する。パタゴニアが今回の危機を乗り切れたら、あらゆる意思決定を、百年先までビジネスを続けるという前提で下さなくてはならない。それほどの長期間にわたって維持できる速度で、成長を続けていくのだ。(p.102)

私たちの理念は規則ではなくガイドライン(指針)ということだ。どんなプロジエクトに取り組む際にも礎となるものであり、たしかにそれ自身は「石のごとく不動」だが、様々な状況への適用に関しては違う。どんな企業であれ、長く続いてきたところでは、たとえビジネスのやり方が次々に変わろうと、価値観、文化、理念はいつまでも変わらない。(p.110)

知識があればあるほど、必要なものは少なくなる。 (p.119)

全体への責任
 私たちが何を使い、何をどうつくり、何を捨てるかは、実をいえば倫理観の問題だ。私たちは、「全体」に対して無限の責任を負っている。常に果たそうと努めているが、いつも果たせるとは限らない責任。その中に、製品の品質と耐用年数がある。
 高品質の製品をつくることは、製品を買う人や使う人に敬意を払い、責任を果たす一つの手段である。(※後略 グレンフォルシュ・ブルーグスの斧のカタログより)(p.121)

人々は消費支出の85〜90%を生活の質の向上に当てている(p.135)

自分のアイデアをみんながいいと褒めたら、そのアイデアは時代遅れだ(p.148)

つべこべ言い訳をせず、やればいいではないか。(中略)「時間がなくて」あるいは「忙しくて」手紙の返事が書けなかった、折り返しの電話をかけられなかった、週報をかけなかった、机を片づけられなかった・・・。これらは嘘の言い訳だ。これらの言葉の裏に隠れた真実は「優先度合いが低いからまだやっていない」のであり、もっと言うなら、やりたくないというのが本心だから、いくら待っても折り返しの電話などかかってこない。人はやりたいことをやるものなのだ。(p.150)

競争の先頭に立ちつづけようと思うなら、アイデアは源にできるだけ近いところからえなくてはならない。専門的な製品の場合、私たちの「源」はダートバッグのコアな客層だ。彼らこそが製品を本来の目的で身につけ、何が使えて何が使えないか、さらに何が必要化見つけ出してくれる。(p.151)

「デザイナー」にとって「製作者」との早い段階からの共同作業がいかに大切かを学んだ。(中略)同じように、よりよいレインジャケットを作りたいなら、製作者は製品に必要な昨日を初めから理解しておくべきだし、逆にデザイナーは今後どんな工程を経るのかわかっていなくてはならない。できあがるまでは全員が作業にかかわりつづけ、チームとして働くことが肝要だ。(p.157)

私たちが納入業者なり契約業者を選ぶ際、真っ先に注目するのは、相手の仕事の質だ。(p.159)

私が思うに、パタゴニアは一種の生態系であり、業者や顧客はその欠かせない構成要素である。システムの何処かに問題が生じれば、やがて全体に影響が及ぶため、有機体のすみずみまで健康に保つことが一人一人の最優先事項となる。(p.160)

もともと風変わりな会社なので、ストーリーをはっきり伝えることがひときわ重要になる。だから文章を用いて製品を売るのと同時に、私たちの考え方もつたえてきた。私たちのコピーには2種類ある。ー私たちの価値観を反映する、あるいは問題を広く知らしめるような個人による寄稿文と、製品の内容を説明する文章だ。(p.201)

パタゴニアのプロモーション活動にはカタログでもそれ以外の手段でも、3つの指針がある。
  1. プロモーションするよりも人々を啓蒙して奮起させること旨とすること。
  2. 信用はカネで買うのではなく勝ち取ること。最も望ましい媒体は、友人どうしの口コミによる推薦、あるいは出版物における好意的な意見である。
  3. 広告は最後の手段と心得ること。
理想をいえば、すばらしい製品はすべて、なんのプロモーションをしなくても売れるべきだ。(p.203)

私たちの広報活動に対する姿勢は、きわめて積極果敢と言える。何か知らせたい事項があれば、それに力を注ぐ。新しい製品のことであれ、環境問題への見解であれ、育児プログラムに関することであれ、記者たちに懸命に働きかけてストーリーを伝えようとする。だが、見かけ倒しの宣伝資料を作ったり、展示会で手の込んだプレスパーティーを開いたりはしない。私たちの考えでは、メディアの注目を集めるいちばんの方法は、なんらかの主張を打ち出すことだ。(p.207)

広告を出す場合は、感銘をタイムリーかつ速やかに与えるのが鉄則だが、カタログの写真やコピーに用いるのと同じ基準をすべて満たさなくてはならない。(p.208)

私たちのミッション・ステートメントは、利益を上げることには少しも触れていない。実のところマリンダも私も、最終的な損益はその年度に成し遂げた善行の数だとみなしているぐらいだ。とはいえ一企業である以上、ビジネスを続けるため、さまざまな目的を果たすために利益を上げる必要がある。利益とは、顧客がパタゴニアの行いに投じてくれた信任票だと考えている。(p.209)

私たちの理念からすれば、財務はビジネス全体の根幹ではなく、ほかのあらゆる部門を補完する役割を持つ。利益は、私たちの働きぶりや製品の質と直に結びつく。品質をまともに追求しない企業は、経費を削減したり、うわべの需要をうみだして売上を増やしたり、一般従業員をこき使ったりして、利益を極限まで引き上げようとする。(p.210)

子どもたちがザ・ノースフェイスやティンバーランドではなくパタゴニアの黒いダウン・ジャケットを購入するのを期待して市内バスに広告を載せたりするのは、言語道断といえる。私たちは製品を欲しがるだけでなく、必要とする顧客に購入してもらいたい。私たちは大企業になることには興味がない。優良企業になりたいのであり、小さな優良企業のほうが、大きな優良企業よりも実現しやすい。したがって自制心を身につけなくてはいけない(p.213)

アメリカの先住民の首長は、いちばんの金持ちだから、あるいは強力な指示集団があるからその地位にえらばれたのではない。選ばれたのは弁論術に長けていたからで、これは総意を取り付けるために必要な技能だったのだ。(p.229)

答えは(会社に寄せられるほぼすべての質問への答えと同じく)理念の中にある。(p.300)

同僚が登山やサーフィンで休みをとるときには「残りの仕事は自分がやるから楽しんでこい」と言い合える雰囲気がある。同僚や販売先、取引先などに気配りするインテグリティ(誠実さ)をパタゴニアは大事にしている。(p.330)