20110710

本の記録 / 中村仁

右向け左の経営学  中村仁  グラフ社


先日、ホットペッパーとfacebookのクーポン問題について話題になった中村仁さんの著書。

この間スクリーングパッドにても講義をしていただき、話がすごく参考になったので、講義では省略されたストーリーを知りたく、この本を購入しました。

中村さんは大手メーカーや広告代理店と異色の経歴の持ち主で、とんかつの豚組や、和風スタンディングバーのなどを運営されています。

飲食業界のtwitter関連の著者としても有名な方です。

以下、本文についてです。
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まず、圧倒されたのは
百年後『老舗』と呼ばれる店を作ろう」(p14)
という考えについてです。

今、私は店を作ることのみについて考えていて、こうした先についての考えはありませんでした。“あなたにはスタートだったの、私にはゴールでも” ってやつです。

しかも、100年後まで。
先を見る姿勢って当たり前なんですけど、ハッと気づかせていただきました。

 人々の生活を真摯に見据え、より豊かで楽しい生活とは何かを考える(p15)
その店ならではの哲学とたゆまぬ進化(p15) 
 時代や社会の変化に固執せず、進化しながら老舗をつくっていこうとも説いています。


西麻布にある壌のできた背景や、こだわりなんかも書かれています。

壌ができた頃には、立ち呑みというと安っぽいイメージしかなかった。立ち呑みだから椅子もない。

新しいスタイルを取り入れ、椅子がないということを逆に強みにしたのです。
まず、椅子がないため、席によって決められる、いわゆる、“上座・下座”という概念がなくなり、お客様が全員平等の立場でいられます。と、同時に、席もテーブルもないため、必然的にお客様同士の距離が縮まります。(p87)

 また、会社として採用・人についても書かれています。
そのようになスタッフになるための適正はあるのでしょうか。私はやはりある程度あると考えています。まずポイントになるのは感受性や想像力です。(中略)またお客様が喜んでくれることにうれしさを感じる人であれば、その人はサービス業に向いています。(p153)
私は、タイプの異なるさまざまな人材を、共通する目標や夢で束ね、一つのチームとして機能させることを大切にしています。(中略)大リーガーは一人ひとりの個性がとても強くて、普通はなかなか一つにまとまらないものです。それでもチームとしてまとまるのは、勝利あるいは優勝という大きな目標があるからにほかなりません。
私は“料理人は職人の最たるもの”だと思っています。ここでいう職人とは、“志と誇りを胸に自分の技術だけを頼りにして、高い目標を目指して生涯をかけて精進し続ける人”という人を意味します。(p161)

オーナーシェフではないがゆえに、おそらくさまざまな苦労があったかと思います。

私の経験で言うとホールと厨房で壁ができたりと、なかなか難しい。
それを見事にクリアされたからこそ、今の店があるのだと思います。


最後に経営についても述べています。
グレイスで店をつくるとき、絶対にコンセプトという言葉を使いません。そういう言葉を私自身が好んで使えば、頭でっかちな人ばかりが集まってきて、結果ロクでもない店しか作れなくなることは、火を見るより明らかです。(中略)なぜなら、店はそこを経営・運営する人の哲学や人生観、理想が込められてこそ、本物になるからです。(p179)
私たちの会社も、仮に「厨房を見せろ」「納品書を見せろ」と言われたら応じるぐらいの覚悟でやっています。何かクレームをつけられたら、誠心誠意きちんと対応して説明します。そこでごまかしたり、嘘をついたりすることはありません。要するに、“裏”を作らない、ということです。
真摯に飲食業を経営されていることがわかる著書であり、また前述のホットペッパーの件では、いち早く所見を表明し、経営者としてのあるべき姿を見せていただき、勉強になりました。

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飲食店のtwitterについてもおすすめです。

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