20110804

本の記録 / V字回復の経営

物語形式になっているので読みやすく、すごく勉強になります。

多くの経営者の方が推薦されているので、少なからず同じような経験をされているのでしょうか。

やっぱり覚悟なり、リスクをとる必要がどう考えても必要なのだと考えます。
自分は出し切っているか?リスクを取ることを選択しているか?

V字回復の経営  三枝匡  日本経済新聞社

p.8 「企業戦略の最大の敵は、組織内部の政治性である」(中略)ここでいう組織の政治性とは、会社の中の派閥のような話ではない。一緒に飲めばとても楽しく、性格もよい普通の社員が、危機感の欠如と変化への恐れから、新しい変革に背を向け、身の安全を図るのである。

p.18 しかし社員が社長と一緒になって考えてくれるなどというのは幻想に過ぎない。社長こそが新しい考え方を模索し、それを提示し、そして社長が自ら行動しなければ、何も起きないのだ。

p.24 組織の危機感を高める経営手法は「危機感が足りない」と叫ぶことではない。経営風土を変える経営手法は「風土改革をしよう」と叫ぶことではない。社員の意識を変えるために「意識改革をしよう」と叫んでも意識は大して変わらない。

p.32 組織の「政治性」は「戦略性」を殺す力を持っている。政治性は、個人の利益・利害の混入、過去の栄光への執着、個人的好き嫌いなどによって生まれ、「正しいか正しくないか」よりも「妥協」重視の組織風土を醸成する。

p.41 改革者が有効な手を打つための第一歩は「事実の把握」だ。自分で組織末端を歩き回り、「ハンズオン」つまり自らの手で現場の細目に触れて事実を確かめなければいけない。そこで見る景色の中に必ず「改革の押しボタン」が隠されている。それは、それなりの考え方と経験をつんだものだけが見分けることのできる押しボタンである。改革者は多くの社員に会い、新しい「ものの見方」を語る。そのストーリーがシンプルで正しいと思われるものであれば、改革者の言葉は強いメッセージ性を発揮し始める。そして改革者は熱き心の社員を「この指とまれ」で組織化することを目指す。

p.53 (赤字経営に陥っている会社の症状)
・顧客の視点はどこへ行った?競合の話は?内向きの話ばっかり
・「負け戦をしている」という自意識がない。
  ・個人として「赤字の痛み」を感じていない。責任を皆で薄めあっている。
・社員が外部の会社に不満を垂れ流している。会社の看板を背負うことを投げ出している。

p.74 攻めの成長会社では、ラインの責任者が自ら議事を組み立て、自ら進行を仕切り、自ら問題点を指摘し、自ら叱り、自ら褒めることをしている。(中略)ラインによる攻めの仕事が減り、スタッフ中心の「守りの業務」が主流になっている沈滞企業では、組織の柱であるラインよりも、副次的存在であるはずのスタッフ同士のコミュニケーション網のほうが発達していることが多い。

p.103 改革シナリオを検討する初めの段階では選択肢を規制しない。問題点の探索をなるべく広く行う。問題の本質が見えてきたら、そこから選択肢を絞り始める。

p.136 (あるセクションリーダーの話)彼らを巻き込むのは私の責任ではないと思っていたのです。とにかく、何一つ動かない組織ですからね。だから私は改善を工場の中だけに限定したのです。しかしそれは「顧客の視点」を見失っていたということであり、「商売」を忘れていたことに他なりません。

p.142 社員に戦略が見えていないというときに考えられる第一原因は、戦略が「組織末端まで伝わっていない」という場合ですね。

p.143 経営改革において「組織の再構築」と「戦略の見直し」はワンセットで検討することが不可欠である。現実には、組織をいじり回す事を先行させてしまう経営者が圧倒的に多い。

p.151 社員のマインド・行動を束にするには、①明確な『戦略』が示されること、②社員が迷いなく走れるようにシンプルなビジネスプロセスが組まれていること、この二つが鍵だ。
p.188 この人が善玉、あの人が悪玉、あるいは営業が善玉、開発が悪玉とか言う分類ではなく・・・社員一人ひとりの中に善玉・悪玉が同居しているのです。

p.206 人々に「強烈な反省論」を迫るときには徹底的な事実・データに基づく追い込みが不可欠である。言い切る確証が得られないこと、反駁される余地のあることはプレゼンの内容に含めてはならない。

p.209 古い体質の個人を作り上げたのは会社自身の責任である。その視線を忘れずに、特定個人や部署を攻めず、古いシステムが現実に引き起こしている問題だけをクールに指摘し続ける。

p.220 社長が本質をつき、深との知的応酬が盛り上がれば、その組織は必ず元気にある。社長がつまらない質問をするなら、権威主義だけがまかり通る。

p.229 戦略の内容の善し悪しよりも、トップが組織戦略末端での実行をしつこくフォローするかどうかのほうが結果に大きな影響がある。

p.232 戦略的な攻めの改革が「人減らし改革」だと受け取られてしまうと、改革者のやることなすことすべてに対して社員は防御的になる。これらふたつを同時に打ち出すことは愚作である。

p.245 (同じ社員が)強烈な反省論を語れば、「同じ社員のお前に言われたくない」という反応が出やすい。そこで第三者あるいは「歴史の部外者」が問題点の指摘を行った。それを逃げとして行うのではなく、論理の権威付けと組み合わせ、納得性を高めることが重要である。内容のレベルが低ければ、今度は「分かっていることを外ものに言われたくない」という反応が強まる。

p.257 反対行動をとる社員には、説明、説得、叱責、切捨てを含め、「熱い心」と「明快なストーリー」で徹頭徹尾指導し、改革者の「覚悟」を示すことが必要である。

p.289 仮説は人々を不安にし、猜疑心を生む。大多数の社員は経営の先読みなどできない。それほど経験も視野も与えられていないからである。だから、リーダーが先読みを行い、決断し、皆に分かる言葉でそれを語り、不安と混沌の中を走り抜けなければならない。

p.296 危機感は自然発生的に生まれたり、ボトムアップで生まれたりするものではない。(中略)リーダーが人為的に作り出すものなのだ。成功する改革はリーダーの下でまとめられる「強烈な反省論」から始まる。それは気軽なものではない。社員が上層部や他部署をあげつらって溜飲を下げることをやめ、全員が「自分もまずかった」と強烈な自省の念に駆られるものでなければならない。つまり会社の痛みを個人レベルにまで分解することが鍵である。

p.298 改革にストーリー性をもたせられるかどうかの勝負は、シナリオ作りの段階ではなく、「原因ロジック」を整理する段階からすでに始まっているのである

p.299 内容の劣ったシナリオは社員の「マインド・行動」にインパクトを与えることができない。それが「説得性不足」の壁である。その壁を乗り越えるためには、シンプルで強力なシナリオが提示されなければならない。しかし皮肉なことに、シンプルで強力なシナリオは逆に社員の心に猜疑心や不安を呼び起こしかねない。鋭い改革案であればあるほど、今度は単純化や変化への抵抗心理が頭をもげてくるのである。そこで大切なことは、①シナリオが論理的権威性に裏付けられていること、②分かりやすいストーリー性をもっていること、そして③改革リーダーが「熱い語り」をもって不退転の姿勢を示すことである。


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