20110628

本の記録 / ドトールコーヒー

自分が飲食業界に携わっているからなんですけど、やっぱり、飲食業界の創業期の話っておもしろいです。
やはり皆さん少なからず苦労している。失敗もしている。
それに負けずに様々な工夫をして、耐え抜いたからこそ、力のある会社となっています。

暗いイメージのある喫茶店業界を塗り替え、ゼロから新たな価値観のあるコーヒー文化を創り上げた、尊敬すべき方です。


ドトールコーヒー 「勝つか死ぬか」の創業記 鳥羽博道  日経ビジネス人文庫



p12 織田信長が掲げたものは「天下布武」であり、武田信玄が掲げたのは「風林火山」である。いずれも有名な言葉だが、戦いの発送だ。だが自らの力だけに頼る思想は、いつか力に負ける。家康の掲げた(「厭離穢土・欣求浄土(乱れたこの世を離れ、極楽浄土に往生する)」)「世のため、人のため」という使命が正しかったからこそ、多くの人々の賛同を得られ、江戸幕府は265年も続いたのである。

p41 「孟母三遷」という言葉がある。孟子の母は息子の成長段階に合わせて、三度転居したという。企業が成長発展していくにつれ、本社というものもそれに相応しい体裁をそなえていかなければならないと、私は常々考えている。本社というのは、ある意味でその企業で働く社員たちの心の変化を作り出す上できわめて重要なことだと思う。

p45 まさに元気のないときの空元気。業績不振に陥ったとき、逆境に追いやられたときに、自分の心まで萎えてしまうか、それとも自ら奮い立たせるか、これは大きな違いだ。

p65 20代前半の若さで世界一周したことで、私はある種の地球観を感じ取った。地球のサイズを身をもって知ったことはその後の私に何らかの影響を与えたと確信している。

p69 (潰れる、潰れると思うから心が萎縮して何もできないのだ。明日潰れてもいい、今日一日、体の続くかぎり全力で働こう)そう思ったことで不思議と気が楽になったのである。

p91 一般的に言って、新しいものを試そうとするのは若い世代で、中高年の人たちというのは新しいものになかなか馴染めないものだ。しかしながら、そういう方々が抵抗なく入ってきてコーヒーを飲んでくれたのだ。「よしっ、これでいける」

p93 チャンスは自分から積極的に仕掛けなければならない。さもなければ、目の前を通過する商機をみすみす見逃してしまうことになる。ただし、商機というものは―たとえどんなに自分が正しいと思っていることでも―「」、すなわち時代の大きな流れ(時代的背景、社会の成熟度)と、「」、すなわちそのことを起こそうとする機会が合致して初めて味方になってくれるものだ。(中略)家康の、「願いが正しければ、時至れば必ず成就する」というこの言葉は私の座右の銘の一つになっている。正しい願い、ポリシーというものは時期が来れば必ず成就する。その努力と忍耐は必ず報われるものだと思う。(中略)要は、積極的につくり、待つという姿勢だと思う。

p104 「恐慌になることもありうる」という前提に立って、借金の大嫌いな私が九八年の秋に銀行借入をした。それは、どんな事態が訪れようとも、社員に二年分の給与を払えるだけの態勢を整えておくためだ。(中略)一年前に借入したお金は九九年十月末にをもって全部返済した。それによる金利もばかにしてはならないが、それは危機に対する保険だったと思っている。

p110 自軍の十倍以上の戦力を誇った今川軍を相手に勝利した織田信長。不可能を可能にしたのはまさに信長の危機意識と、考え抜いた末の大胆な、捨て身な行動だった。(中略)商売、経営の要点もまさにこの点にある。常に自分たちの将来に危機感を抱き、どうしたら危機を乗り越えられるのか、とことん考え抜くことだ。負けるのが嫌であれば、どうしたら勝てるのか、それだけに思いをめぐらすことだ。商売というのは感情の赴くままにやっていては絶対にうまくいかない。心のうちに迷いがあるうちは考え続けることだ。必要とあれば人の意見にも真摯に耳を傾ける。そして、こうと確信したら臆さずに、一気に行動に移す。

p113 一言でいえば企業哲学の違いに尽きる。儲かりそうだからやるのか、一杯のコーヒーを通じて安らぎと活力を提供したいと心から願ってやるのか。その違いは必ずどこかに現れてくるものだ。コーヒーの味の差であり、店舗の魅力の差であり、接客態度の差だ。またお客様にもそうした違いを敏感に嗅ぎ分ける嗅覚があるようだ。ただ単に形式だけを真似てやったものは、感動、共感、共鳴を呼び起こすことなどできない。そこに魂が入っているかどうか。経営理念があるかどうか。さらには、店舗、商品など、お客様に提供するものすべてのものがそうした企業理念に裏打ちされたものであるかどうかということだと思う。

p118 堅実経営という言葉がある。何が堅実で、何が堅実でないか。私が思うに、堅実経営というのは、本業の深化に徹して、信用状況をこつこつと積み重ねながら、その上に企業の拡大を図っていくことだと思う。言い換えれば、足元を一歩一歩かためていきながら、一気に実力以上のことはやらないことではないかと思う。

p127 では、コーヒー一杯の価格設定をどこに設定すればいいのだろうか。毎日飲んでも負担のかからない価格とはいったいいくらなのだろうか。「二百円では高すぎる。百八十円ではいかにも値引きしたという感がある。やはり百五十円しかない。」

p139 繰り返し口にすることで私の考えが取締役、事業部長クラスに浸透し、今度は彼らがそのことを部下に唱えてくれるようになる。そうして「顧客第一主義」に根ざした社風が出来あがっていき、組織が一段階高いレベルになっていくことを願っている。

p149 反応の早さは信頼の深さ

p157 そもそも「○○でもやるか」という意識で商売をやってうまくいくものなど、何一つないのだ。

p182 私は日本で一番品質のよいソーセージをつくるメーカーを探して、それが栃木県にあるハムメーカーであることを突き詰めた。そこで、すぐにパンをもって栃木まで車を走らせた。(中略)日本のあるパンメーカーと一緒にドイツに行って、まずソーセージを味わってもらって、それからドイツ、フランスで集めるだけパンを集めることにした。

p187 クリーム色が色彩心理学上、母性愛を示す色だということが記されていた。(中略)さらに、活力を示す色が赤茶色だということも知り、壁は赤色で塗装することにした。また、スプーン、カップなどの什器・備品についても、安らぎと活力をあたるものはどういうものかという観点から選んでいる。たとえば、スプーンについては、これは男性好みになっていないか、若者好みになっていないか、といろいろ考えて、三回ほど作り替えもした

p202 企業において必要とされるのは、もう一段高い意識へレベルアップを図ることのできる人材であり、常に高い目的意識をもって成長しつづけ、仕事に対して厳しい姿勢で臨むことのできる人材だ。経営者のみならず全社員がビジネスマン的意識に立つことが会社全体のレベルを引き上げることになり、売上を伸ばし、利益を上げることになる。

p204 優しい人、俗に言ういい人、それも人間の性格としてはもちろん大切なことではあるし、それなりの高い評価を受けることもできるだろう。ただ、企業経営、組織運営という立場から考えるとちょっと違う。一番評価の高かったのはやはり、「仕事に厳しい人」だということだ。

p207 「口舌を以って民を叱るな。むしろ良風をおこして、その風に倣わせよ。風をおこすもの、吏と師にあり。吏と師にして克己の範を垂れ、その元に懶惰の民が悪法を見ることなけん」


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次は、コーヒーつながりでタリーズ紹介させていただきます。

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