20110726

音楽の記録 / 結婚パーティー

結婚パーティー March 2009

このブログは自分のcultureの部分を記録するということで始めました


じゃあ自分の結婚パーティーで流した曲も記録として残しておこうということで、恥部をさらすようで恥ずかしいのですが私たち夫婦が友達を招待した結婚パーティーで流した曲たちを残してみます。


自分の記録と、何かの参考になれば。
時系列で記録してみます。



【待ち時間】


入場までの待ち時間、自分たちの生い立ち写真とは別に、来てくれた友達への感謝を込めて私たちが持っている写真を流させていただきました。その時に流した曲。


サニーデイ・サービス / 恋は桃色, Intro



はっぴぃえんど / 風をあつめて



もう、これは結婚式うんぬんじゃなくて流したかった。


【入場】


Jakson 5 /  The Love You Save



「君が好きだー、君も本当は僕のこと好きなんだろ?マイベイビー」っていう一方的な妄想的な恋の曲だと私は解釈してます。
まぁ、ラブラブしすぎてなくて私たちらしく、出だしもインパクトがあるから一番目にしました。


Super Furry Animals / Juxtaposed With U


これ、もうすごい好きな曲なんです。
キラキラした雰囲気が1曲目にも合っているのではないかと迷ったんですけど、愛だの恋だのの曲でもないので、残念ながら2番目にもっていくことに。



【式中】

The Beatles / P.S. I Love You
                    Strawberry Fields Foever
                    The Long Winding Load
                    In My Life


小沢健二 / 今夜はブギーバッグ


The HIGH-LOWS / 千年メダル

私の名曲。結婚式にふさわしそうな曲を選んでみました。
Strawberry ~はどうか分かんないけど、四の五の言わず流したかった。


実は言うと式中は、流れていたのあんまり知らない。


【生い立ち写真流し時】


くるり / 春風


はっぴぃえんど「風をあつめて」と肩を並べる珠玉の名曲。
情景が思い浮かぶ曲ってのはそれだけで名曲だと思います。(PVはえらくダサいけど)


【スピーチ時】

中村一義 / いつも二人で

中村一義の名盤「太陽」より。ピアノがよかった。歌詞の内容も終盤にいいのではないかと決めました。
写真見直すとこのころから酔ってます。


【退場】

小沢健二 / それはちょっと

Jackson5 / The Love You Saveに対する返答。この歌詞の照れく隠しも私たちらしい。


RCサクセション / 雨上がりの夜空に

2008年3月、まだ清志郎が病気と闘っている時期。早く治ることへの願いとオマージュをこめて。

1次パーティーで酔ってしまったので、その夜はおまえに乗れるわけもなく、3次会で生まれて初めての寝ゲロをしました。

==
結婚式は自分たちの人生の分岐点。ラブソングっていう制約を設けてはいますが、ここで選ぶ曲が、やっぱり自分の根底にある好きな曲なんだなと、見直してみて改めて思いました。(嫁には有無を言わさず私が決めました。)

やっぱ自己マンですね。



 

20110710

本の記録 / 中村仁

右向け左の経営学  中村仁  グラフ社


先日、ホットペッパーとfacebookのクーポン問題について話題になった中村仁さんの著書。

この間スクリーングパッドにても講義をしていただき、話がすごく参考になったので、講義では省略されたストーリーを知りたく、この本を購入しました。

中村さんは大手メーカーや広告代理店と異色の経歴の持ち主で、とんかつの豚組や、和風スタンディングバーのなどを運営されています。

飲食業界のtwitter関連の著者としても有名な方です。

以下、本文についてです。
==

まず、圧倒されたのは
百年後『老舗』と呼ばれる店を作ろう」(p14)
という考えについてです。

今、私は店を作ることのみについて考えていて、こうした先についての考えはありませんでした。“あなたにはスタートだったの、私にはゴールでも” ってやつです。

しかも、100年後まで。
先を見る姿勢って当たり前なんですけど、ハッと気づかせていただきました。

 人々の生活を真摯に見据え、より豊かで楽しい生活とは何かを考える(p15)
その店ならではの哲学とたゆまぬ進化(p15) 
 時代や社会の変化に固執せず、進化しながら老舗をつくっていこうとも説いています。


西麻布にある壌のできた背景や、こだわりなんかも書かれています。

壌ができた頃には、立ち呑みというと安っぽいイメージしかなかった。立ち呑みだから椅子もない。

新しいスタイルを取り入れ、椅子がないということを逆に強みにしたのです。
まず、椅子がないため、席によって決められる、いわゆる、“上座・下座”という概念がなくなり、お客様が全員平等の立場でいられます。と、同時に、席もテーブルもないため、必然的にお客様同士の距離が縮まります。(p87)

 また、会社として採用・人についても書かれています。
そのようになスタッフになるための適正はあるのでしょうか。私はやはりある程度あると考えています。まずポイントになるのは感受性や想像力です。(中略)またお客様が喜んでくれることにうれしさを感じる人であれば、その人はサービス業に向いています。(p153)
私は、タイプの異なるさまざまな人材を、共通する目標や夢で束ね、一つのチームとして機能させることを大切にしています。(中略)大リーガーは一人ひとりの個性がとても強くて、普通はなかなか一つにまとまらないものです。それでもチームとしてまとまるのは、勝利あるいは優勝という大きな目標があるからにほかなりません。
私は“料理人は職人の最たるもの”だと思っています。ここでいう職人とは、“志と誇りを胸に自分の技術だけを頼りにして、高い目標を目指して生涯をかけて精進し続ける人”という人を意味します。(p161)

オーナーシェフではないがゆえに、おそらくさまざまな苦労があったかと思います。

私の経験で言うとホールと厨房で壁ができたりと、なかなか難しい。
それを見事にクリアされたからこそ、今の店があるのだと思います。


最後に経営についても述べています。
グレイスで店をつくるとき、絶対にコンセプトという言葉を使いません。そういう言葉を私自身が好んで使えば、頭でっかちな人ばかりが集まってきて、結果ロクでもない店しか作れなくなることは、火を見るより明らかです。(中略)なぜなら、店はそこを経営・運営する人の哲学や人生観、理想が込められてこそ、本物になるからです。(p179)
私たちの会社も、仮に「厨房を見せろ」「納品書を見せろ」と言われたら応じるぐらいの覚悟でやっています。何かクレームをつけられたら、誠心誠意きちんと対応して説明します。そこでごまかしたり、嘘をついたりすることはありません。要するに、“裏”を作らない、ということです。
真摯に飲食業を経営されていることがわかる著書であり、また前述のホットペッパーの件では、いち早く所見を表明し、経営者としてのあるべき姿を見せていただき、勉強になりました。

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飲食店のtwitterについてもおすすめです。

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20110708

映画の記録 / いのちの食べかた

いのちの食べかた  監督:ニコラウス・ゲイハルター


「飲食に携わる者としていつか見なきゃね」、とヨメと言っていたもののパッケージに描かれた牛の解体写真を見るたびに、ついつい後回しにしてきてしまいました。

だって、ね...

好き好んで残酷な映画を見る時間も、心の余裕も...

でも、次のステップに取り組もうとしている今、意を決して見ることに。
(ヨメは途中で寝ましたが。。)

セリフらしいセリフはない90分程度のショートムービー。

ヒヨコ、トマト、オリーブ、豚、牛、鮭といったいのちが、消費者に届くために、選別され、摘まれ、機械によって冷たく扱われ、解体されていく現場の様子が淡々と流れていきます。

飲食業に携わる者としての私の経験ですが、店舗では「原材料=食材」として商品を発注して、それが大量のロットで納品されて、そこに手を加えてお客様に「料理」として提供しており、発注した食材を自分や店の提供する作品(=料理)の一部としてしか見ていないようなことがありました。

というか、そこまでも考えていない、慣れてしまい感覚がマヒしてしまっているんですね。

もちろんそれは材料という無機質な言葉で表わされるはずもなく、元々は「いのち」なのだということを強く再認識することができました。


飲食業界に携わるということは、すなわち、頂いた「いのち」に接する機会が多いということ。
飲食業に携わる以上、責任を持って、「いのち」のありがたみを届けることここに強く誓います。

何が正しい正しくないとかではなく、食べるということはいのちを頂いているという事実があり、その事実を知るためにこの映画を見てみてるのはいい経験だと思います。

詳しくは下記サイト
いのちの食べかた

20110701

映画の記録 / 父 パードレ パドローネ

父 パードレ・パドローネ   パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ  イタリア


イタリア・サルデーニャ島。
羊飼いの父子の物語です。


父(パードレ)であり、主人(パドローネ)である父親が小学校から息子を連れ去るシーンから始まります。理由は羊の世話をする人手が足りないため。
その息子が、厳格な父親に従いながら(従わざるを得ず)20歳になって島を出て・・・



イタリア語を学んでいた大学時代、イタリアは識字率がつい最近まで低かったことを聞きました。掟や文化、家族を優先するイタリアならではの昔ながらの文化があり、生活のためには教育を二の次にする。
それに一石を投じる映画、

自らが学習することの大切さ、家族とは、固定観念を打ち破るのは自ずからだといったことを考えさせられる映画でした。


幼少期や、島にいる間の青年期の主人公の目から見えるサルデーニャ島の情景が素晴らしい。
音楽や、思春期ならではのシーン、ユーモア、カメラアングルなど前半がすごく面白い。北野映画を見ているみたいな爽快感。

イタリアにもう一度ゆっくりと行きたいです。


20110628

本の記録 / ドトールコーヒー

自分が飲食業界に携わっているからなんですけど、やっぱり、飲食業界の創業期の話っておもしろいです。
やはり皆さん少なからず苦労している。失敗もしている。
それに負けずに様々な工夫をして、耐え抜いたからこそ、力のある会社となっています。

暗いイメージのある喫茶店業界を塗り替え、ゼロから新たな価値観のあるコーヒー文化を創り上げた、尊敬すべき方です。


ドトールコーヒー 「勝つか死ぬか」の創業記 鳥羽博道  日経ビジネス人文庫



p12 織田信長が掲げたものは「天下布武」であり、武田信玄が掲げたのは「風林火山」である。いずれも有名な言葉だが、戦いの発送だ。だが自らの力だけに頼る思想は、いつか力に負ける。家康の掲げた(「厭離穢土・欣求浄土(乱れたこの世を離れ、極楽浄土に往生する)」)「世のため、人のため」という使命が正しかったからこそ、多くの人々の賛同を得られ、江戸幕府は265年も続いたのである。

p41 「孟母三遷」という言葉がある。孟子の母は息子の成長段階に合わせて、三度転居したという。企業が成長発展していくにつれ、本社というものもそれに相応しい体裁をそなえていかなければならないと、私は常々考えている。本社というのは、ある意味でその企業で働く社員たちの心の変化を作り出す上できわめて重要なことだと思う。

p45 まさに元気のないときの空元気。業績不振に陥ったとき、逆境に追いやられたときに、自分の心まで萎えてしまうか、それとも自ら奮い立たせるか、これは大きな違いだ。

p65 20代前半の若さで世界一周したことで、私はある種の地球観を感じ取った。地球のサイズを身をもって知ったことはその後の私に何らかの影響を与えたと確信している。

p69 (潰れる、潰れると思うから心が萎縮して何もできないのだ。明日潰れてもいい、今日一日、体の続くかぎり全力で働こう)そう思ったことで不思議と気が楽になったのである。

p91 一般的に言って、新しいものを試そうとするのは若い世代で、中高年の人たちというのは新しいものになかなか馴染めないものだ。しかしながら、そういう方々が抵抗なく入ってきてコーヒーを飲んでくれたのだ。「よしっ、これでいける」

p93 チャンスは自分から積極的に仕掛けなければならない。さもなければ、目の前を通過する商機をみすみす見逃してしまうことになる。ただし、商機というものは―たとえどんなに自分が正しいと思っていることでも―「」、すなわち時代の大きな流れ(時代的背景、社会の成熟度)と、「」、すなわちそのことを起こそうとする機会が合致して初めて味方になってくれるものだ。(中略)家康の、「願いが正しければ、時至れば必ず成就する」というこの言葉は私の座右の銘の一つになっている。正しい願い、ポリシーというものは時期が来れば必ず成就する。その努力と忍耐は必ず報われるものだと思う。(中略)要は、積極的につくり、待つという姿勢だと思う。

p104 「恐慌になることもありうる」という前提に立って、借金の大嫌いな私が九八年の秋に銀行借入をした。それは、どんな事態が訪れようとも、社員に二年分の給与を払えるだけの態勢を整えておくためだ。(中略)一年前に借入したお金は九九年十月末にをもって全部返済した。それによる金利もばかにしてはならないが、それは危機に対する保険だったと思っている。

p110 自軍の十倍以上の戦力を誇った今川軍を相手に勝利した織田信長。不可能を可能にしたのはまさに信長の危機意識と、考え抜いた末の大胆な、捨て身な行動だった。(中略)商売、経営の要点もまさにこの点にある。常に自分たちの将来に危機感を抱き、どうしたら危機を乗り越えられるのか、とことん考え抜くことだ。負けるのが嫌であれば、どうしたら勝てるのか、それだけに思いをめぐらすことだ。商売というのは感情の赴くままにやっていては絶対にうまくいかない。心のうちに迷いがあるうちは考え続けることだ。必要とあれば人の意見にも真摯に耳を傾ける。そして、こうと確信したら臆さずに、一気に行動に移す。

p113 一言でいえば企業哲学の違いに尽きる。儲かりそうだからやるのか、一杯のコーヒーを通じて安らぎと活力を提供したいと心から願ってやるのか。その違いは必ずどこかに現れてくるものだ。コーヒーの味の差であり、店舗の魅力の差であり、接客態度の差だ。またお客様にもそうした違いを敏感に嗅ぎ分ける嗅覚があるようだ。ただ単に形式だけを真似てやったものは、感動、共感、共鳴を呼び起こすことなどできない。そこに魂が入っているかどうか。経営理念があるかどうか。さらには、店舗、商品など、お客様に提供するものすべてのものがそうした企業理念に裏打ちされたものであるかどうかということだと思う。

p118 堅実経営という言葉がある。何が堅実で、何が堅実でないか。私が思うに、堅実経営というのは、本業の深化に徹して、信用状況をこつこつと積み重ねながら、その上に企業の拡大を図っていくことだと思う。言い換えれば、足元を一歩一歩かためていきながら、一気に実力以上のことはやらないことではないかと思う。

p127 では、コーヒー一杯の価格設定をどこに設定すればいいのだろうか。毎日飲んでも負担のかからない価格とはいったいいくらなのだろうか。「二百円では高すぎる。百八十円ではいかにも値引きしたという感がある。やはり百五十円しかない。」

p139 繰り返し口にすることで私の考えが取締役、事業部長クラスに浸透し、今度は彼らがそのことを部下に唱えてくれるようになる。そうして「顧客第一主義」に根ざした社風が出来あがっていき、組織が一段階高いレベルになっていくことを願っている。

p149 反応の早さは信頼の深さ

p157 そもそも「○○でもやるか」という意識で商売をやってうまくいくものなど、何一つないのだ。

p182 私は日本で一番品質のよいソーセージをつくるメーカーを探して、それが栃木県にあるハムメーカーであることを突き詰めた。そこで、すぐにパンをもって栃木まで車を走らせた。(中略)日本のあるパンメーカーと一緒にドイツに行って、まずソーセージを味わってもらって、それからドイツ、フランスで集めるだけパンを集めることにした。

p187 クリーム色が色彩心理学上、母性愛を示す色だということが記されていた。(中略)さらに、活力を示す色が赤茶色だということも知り、壁は赤色で塗装することにした。また、スプーン、カップなどの什器・備品についても、安らぎと活力をあたるものはどういうものかという観点から選んでいる。たとえば、スプーンについては、これは男性好みになっていないか、若者好みになっていないか、といろいろ考えて、三回ほど作り替えもした

p202 企業において必要とされるのは、もう一段高い意識へレベルアップを図ることのできる人材であり、常に高い目的意識をもって成長しつづけ、仕事に対して厳しい姿勢で臨むことのできる人材だ。経営者のみならず全社員がビジネスマン的意識に立つことが会社全体のレベルを引き上げることになり、売上を伸ばし、利益を上げることになる。

p204 優しい人、俗に言ういい人、それも人間の性格としてはもちろん大切なことではあるし、それなりの高い評価を受けることもできるだろう。ただ、企業経営、組織運営という立場から考えるとちょっと違う。一番評価の高かったのはやはり、「仕事に厳しい人」だということだ。

p207 「口舌を以って民を叱るな。むしろ良風をおこして、その風に倣わせよ。風をおこすもの、吏と師にあり。吏と師にして克己の範を垂れ、その元に懶惰の民が悪法を見ることなけん」


鳥羽 博道 日本経済新聞出版社 2008-09
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次は、コーヒーつながりでタリーズ紹介させていただきます。

20110620

本の記録 / 世に棲む日日

今回は記録のみ。自分の過去のデータの復習です。

世に棲む日日 司馬遼太郎  文春文庫


(一)
p20 「侍は作るものだ。生まれるものではない。」

p36 「大事には」松蔭は言う。「大人物を用いよ。小事には小人物を当てよ。それが適材適所というものである。」

p117 大いなる義とは、仲間との約束を守るということであろう。たかがしれた約束ではないかとあるいは人は言うであろう。しかし松蔭というこの純粋思考の徒にすれば、その程度の約束すら守れず、その程度の義さえ行えない人間になにができるかと、深刻に考えている。

p157 お前の志は、どうやら遠大らしい。今大きな志の前で小さな過ちを犯したが、これはまあ過ぎたことだ。将来の志のために使え。

p223 浪人ではないか。藩から逐放されているくせになおも先代の藩主の忌日をおぼえていて、その日の精進をこの若者は守ろうとしている。「物事の大事というのは、ああいう男でないとできないものだ。」

p247 要するに、この時期の松蔭は気づかなかったが、専門家ではなく総合者であるようであった。そのするどい総合感覚からあらゆる知識を組織し、そこから法則、原理、もしくは思想、あるいは自分の行動基準を引き出そうとしていた。

p258 物事の理論を申してもつい空理空論になりやすい。それよりも実際にあったことをのべるほうが、自分の思想を語るのに語りやすい、ということであります。


(二)
p117 自分はかつて同志の中で、若くて多才なものを人選したことがある。久坂玄瑞をもって第一流とした。その次に、高杉がやってきた。高杉は知識の豊富な士である。しかし学問は十分ではなく、その議論も主観的にすぎ、我意が強すぎた。だから自分はことさらに久坂をほめちぎることによって高杉の競争心をあおり、学問させようとした。」

p148 革命の初動期は詩人的な預言者があらわれ、「偏癖」の言動を持って世からおいつめられ、必ず非業に死ぬ。松蔭がそれにあたるであろう。革命の中期には卓抜な行動家があらわれ、奇策縦横の行動をもって雷電風雨のような行動をとる。高杉晋作、坂本竜馬らがそれに相当し、この危険な事業家もまた多くは死ぬ。それらの果実を採って先駆者の理想を容赦なくすて、処理可能なかたちで革命の世を作り、大いに絵遺脱するのが処理家たちの仕事である。伊藤博文がそれにあたる。

p240 坂本(竜馬)は時勢の魔術性というものをどうやら天性しっていたらしく、時勢の紛糾がぎりぎりの袋小路に入り込むまでこの意見(航海遠略策)を露にはしなかった。それ以前にこの「正論」を露にしておれば、彼は自分同士である攘夷家に斬られていたであろう。

p241 正論では革命はおこせない。革命をおこすものは僻論である。


(三)
p12  井上はあとを追った、金をつくるにはここまで執拗でなければならなかった

p79 すべてをうしなったとき、初めて藩主以下のひとびとは狂人としての晋作の意見に耳をかたむけ、それに縋ろうとするにちがいない。(事というのはそこではじめて成せる。それまで待たねばならぬ)と、晋作はおもっている。それまでは、敗戦の連続になるに違いない。そういう敗軍のときに出れば、敗戦の責めを引っかぶる役になり、ひとびとは晋作を救世主とはおもわなくなるだろう。ひとに救世主と思わさなければなにごともできないことを、晋作はよく知っていた。

p96 「なるほど」と、白石正一郎は、晋作の話が終わるたびに、すこし目を細め、温和な顔を点とうなずかせるのである。

p124 晋作はかねて、影響力のない人間はおおぜいをうごかすことができないとおもっていたのだが、どうやら自分はそうであるらしい。

p126 集団の時代が来た。集団というものの生物的生理が発狂集団へ騰がるとき個々の「狂者」などはいない。今日であるための個人的危険性もなかった。発狂集団の中にいればかえって安全であった。

p174 この時期の彼の行動を跡付けてみると、自己愛というものをまるで持ちわせていないほどに捨て身の行動をした。本来、かれが自己愛から行動を決める人物なら、ロンドンから急ぎ帰国する必要などはなく、留学の機会をそのまま掴んで離さないほうが、身の利益であったであろう。

p205 太平洋戦争のベルは、肉体を持たない煙のような「上司」もしくはその「会議」というものが押したのである。そのベルが押されたために幾百万の日本人が死んだが、しかしそれを押した実質的責任者はどこにもいない。東条英機という当時の首相は、単に「上司」というきわめて中傷的な存在にすぎないのである。

p208 狂人には仲間がいた。仲間がいることによって狂気が相互影響しあい、行動を飛躍させていく。

p269 しかしこの時代の貴族が重要な会談を行う場合、すぐには物を言わない。棋士が駒をいったん置けばはずせないように、この時代、言葉がいったん吐かれれば取り消しがきかなかった。


(四)
p9 武士は料簡がせまい。しかしこのせまさがあってこそ、主に忠義などという、町人が聞けばばかばかしいかも知れぬことで腹も切り、命も捨てられるのだ。

p51 椋梨の行動は、機敏であった。かれはこれまで謹慎を命じてあったかつての尊皇派の旧政府員七人を捕縛し、野山獄舎でいそぎ首を刎ねてしまった。椋梨にすれば、この際幕府の印象をよくしておかねばならない。同時にこの政治犯の断罪によって藩内に淀んでいたあいまいな空気を一掃し、藩士一同の気分を決戦にむかって統一しようとした。

p69 ―自分たちは秩序的にも筋が通っている。ということを、自ら信じたかったし、全軍にそれを信じさせなければ、この長州人は大勇猛心を発揮できないのである。

p78 総司令官とは人格的な威厳を持って衆を率い、衆をしてよろこんで死地に身を投ぜしめるものであり、参謀とは、それに智謀を与える役目であった。

p90 宗教に儀式が必要なように、一つの軍隊での全員に死を覚悟させるためには、儀式が必要であった。(中略)今ここで敗れれば刑死、戦ってもむろん士である。一同、髪を切った。

p97 ところが御堀耕助はそれを怖れた。扇動者であるかれがそのままこの農民軍の大将の座にすわれば、世間の目にはどう見るであろう。脂ぎった野心家のようにもとられそうであり、御堀はそういう生臭さに耐えられない人物であった。

p116 兵は勢いである

p129 「勝利軍は無言なるがよし」(中略)力ある男の無言なる姿ほど、相手に畏怖を与えるものはないということを晋作は知っていた。

p135 この男は行動を欲するがために行動しているのであり、行動の終末がたとえ革命の成功であれ栄達であれ、天性いやなのである。

p138 事をなすべく目標を鋭く持ち。それに向かって生死を誓いつつ突き進んでいるときは、どの人間の姿も美しい。が、ひとたび成功し、集団として目標を失ってしまえば、そのエネルギーは仲間同士の葛藤に向けられる。

p213 「おうの、その荷物をもってこい。」行動に目的を持たせると、人間というものは、他愛のないもので、おうのから恐怖が落ち、いそいそと荷物を抱いて晋作のそばに寄ってきた。

p258 晋作にすれば幕府と対戦する以上、英国の同情を得ておきたい。が、こちらから平身低頭すれば今後の長英関係の悪しき基盤をなしてしまう、むしろここで長州藩の硬骨振りを見せておくほうが、今後の関係がうまくゆくとみていた。

p266 (戦いは一日早ければ一日の利益がある。まず飛び出すことだ、思案はそれからでいい



司馬 遼太郎 文藝春秋 2003-03
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20110615

本の記録 / レストラン

ビジネスで大切なことはみんなレストランで教わった  岡田博紀  大和書房


飲食業界に限らずすべての方におすすめの本を紹介させていただきます。

題名である程度内容はわかるのですが、背表紙に、いきなりこう書いてあります。
経理、人事・教育、マーケティング、マネジメント、接客・サービス、一生役立つビジネススキルはすべてレストランで学べる!
 経営とかビジネスっていうとすごく話がでかくなるんですが、要は飲食店で働けば、飲食店を運営できればビジネススキルすべてが身につくいうことです。

筆者の岡田さんは三菱商事や、ジャフコといった大企業に在籍したこともあるお方なのですが、題名のように「すべて学べる」のように断言する。
そこには、筆者が能動的に経営されてきたから他ないのですが、題名の言葉は本の内容にある事例から裏打ちされたもので、説得力があります。

内容を少しまとめてみます。


経理について

  • 経理はジョブローテションでまわす
  • 会社の数字をオープンにする
給与までをも公開しているとあり、これについては賛否両論あるかもしれませんが(私はスタッフ給与の差がある場合はすべきではないと思っています。)、会社の全てをオープンにする。
更に、経理をローテションとすることで、スタッフ力の底上げと同時に全員に収支についての意識を与える。職人が多い飲食業界の中でこういった視点はすごくなるほどと思いました。
ローテーション、使ってみたい。


マネジメントについて
  • 社員がひとりでも組織図を作る
  • 1年後の未来組織図を作る
組織図の重要性は他の本やセミナーでも見聞きした事あるのですがやはり、すごく重要なことなんですね。
組織図をつくることで、必要な人材やどの部門を強化するかなどが鮮明なイメージとして出来上がるとのことです。また、責任を明確にする。未来を書くことで育て方なんかもわかってくる。
これも作ってみよう。


人事・教育について
  • 募集広告の書き方で集まる人材が変わる
  • 価値観の共有がなにより大切
そうです。飲食店はホスピタリティ産業なのだからどうしてもマンパワーの重要性は高いでです。
やっぱりトップと同じことをその下の人が、トップがいない場で話しているのを聞くと、その組織をすごく信用したくなる。
具体的には、うちの店だったらこれとこれだったらどちらを優先するか、ということを明確に伝えます。(中略)わが社にはそういう価値観と行動指針の項目が30個ぐらいあります。価値観は創業当初からぶれていませんが、行動指針は絶えずブラッシュアップしてます。(p.83)

根本や守るべきことは変えずに、時代や環境に合わせてイノベーションをしていく。

まだまだマーケティングや会社を創るといった事なんかも書いてあります。

最後に特に共感ができた箇所を2点引用させてもらいます。

ぼくは仕事選びの基準は大きく2つあると思っています。ひとつは自分のエッジが立っているところを探すこと。もうひとつは自分の強みにきづくこと。エッジが立つところとは人より「興味がある」こと。自分の強みとは人より「できる」こと(p.8)
飲食業界は、働きさ先としてはすごくハードルが低いといういうか、門戸が広い職場です。 (中略)「ハードルが低いからとりあえず働いてみよう」ではなく、志の高い、才能にあふれた人たちが集まる業界に変えていきたいのです。(p.105)

岡田さんが大切にされていることは、「おもてなし」の心を飲食業界でもつこと。
志高い、筆者を尊敬します。

岡田 博紀 大和書房 2010-04-21
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