20110904

本の記録 / 太閤記

新史 太閤記  司馬遼太郎  新潮社



豊臣秀吉という人物が小さいころから何故だかあまり好きではありませんでした。
どうにも歴史の本で見る他の偉人のようなヒーローではなく、人間臭が強すぎて。


司馬遼太郎が描く本書や「へうげもの」を見てからその人間臭さが逆に好きになってきました。
年をとったのかもしれません。
見習うべき部分が多々あります。


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p.24 「おれはこの世で立つ何物も持ち合わせておらぬ。金も門地も。 ― せめて律儀でなければ人は相手にすまい。」

p.39 (― ここが先途)と、猿は思った。必要とあれば自尊心を捨てることに馴れきっている。

p.39 猿はこの平和さに驚き、(このような土地に長くいれば、澱みの水が腐るがごとく心も腐ってくるのではないか)・・・長くいるべき土地ではないかも知れぬ、と感じた

p.46 「わしは奉公を商うとるのよ」(中略)猿の言う真意は、「使われているのではなく、一個の独立した人間とした自覚を持ち、奉公というものを請け負っている。されば松下屋敷の経費はできるだけ縮め、主人嘉兵衛に徳をさせるのが自分の器量であり、誇りである」

p.94 「人の気が沈めば、戦はしまいだ」

p.96 新恩を頂戴して、信長に損をかけたという。損をかけた以上、敵地を切り取り、切り取る以上少なくとも千貫切り取り、信長の出費を零にし、残る五百貫分だけ信長に儲けさせねばならぬ

p.103 士が愛されるということは、寵童のような情愛を受けたり、嬖臣のように酒色の座に同席させられるということではあるまい。自分の能力や誠実を認められることであろう。

p.129 (信玄が、履を舐めよというのなら、地に身を投じてなめてやる)とさえ、思っていた。自尊心の病的につよいはずのこの男(信長)が、こと調略になると、自尊心を凍結することができた。

p.134 毒気があれば、知者と悪人と同義語だ、と、猿は言うのである。猿はひとに、毒気がないことを印象させるために、思い切って陽気な自分を演出していた。陽気でさえあれば盗賊でさえ愛嬌ものになる、という機微を、猿は知り抜いているようであった。

p.151 「おれという舟に、安堵して乗っておれ。舟の外に出ようとすると犬死するぞ。生死をすべておれに任せよ。息をそろえ、心をそろえて、おれの指示通りに動け」

p.158 もともと敵というものは来るときに鋭く、岐路に突くときに惰気が生じます。「敵の惰気を打つ」

p.216 (すこし、強引だったかな)という多少の不安はあったが、なにかまわぬ、みなおれの論に服したのだと思い、安堵もしていた。が、ひとというものはわからない。議論で負けたものは帰ってそれを恥辱とし、議論の勝者に本心まではひきわたさないということを知るには、(黒田)官兵衛は若すぎた。

p.220 家臣をそこまで肥大させるべきではないという統率の原理

p.239 信長の意見は、戦略的にはただしいであろう。しかし織田家は天下に信を失う。(信を失えば天下がとれぬ)というのが、藤吉郎の持論だった。(中略)信長恃むべからず、としてたれかがまた叛く。

p.250 その実務的関心から自分の文明思想を変えようとした。変えたものが時代のあたらしい勝利者になるということを、信長は敏感に察していた。

p.251 この宗門の背景にあるあたらしい文明を知ることによって宇宙や世界の原理を知り、それを知ることによって自分の発想力を豊かにしようとしているのであろう。

p.293 官兵衛は智がありすぎ、その智を若さが、つい誇り顔に舌の端にのせてしまった。智はときに深く秘せられなければならない。

p.300 速さこそ、勝利だ

p.306 この発表(籠城する気がないため兵糧をなくすこと)をきけば城内城下は沸きあがるであろう。沸きあがった勢いがこの一線への覚悟になり、景気づけになり、戦意になるであろう。さらに複雑なこの混成軍の士気が一時にひとつ心にまとまるにちがいない。

p.337 人間一生のうち、飛躍を遂げようとおもえば生涯に一度だけ渾身の知恵をしぼって悪事をせねばならぬ。

p.343 感謝は過剰すぎるほうがいいとこの男は平素から思っていた

p.359 人の行為によろこばぬと人はかえって裏切るということを、秀吉はよく知っている。

p.379 調略をしようと思えば、いま家康がなにを欲し、なにを怖れ、なにに魅力を感じているか、ということについて犀利な分析がなければならない

p.415 この男は、内通、裏切りといったような、ひとの倫理観を刺戟するような言葉をいっさい使わなかった。

p.450 秀吉は毛ほどもその胸中の動揺を配下には見せなかった。武将たる者はいかなる名優よりも名優であるべきであろう。

p.455 あせっては、勝てない。あせった側がいくさに勝ったためしのない

p.464 秀吉は、この(中入れ)作戦についての不安感を、兵力を増強することで紛らわそうとした。(中y略)この不安感から免れるには兵力を増強するよりも、この悪しき着想そのものをやめさせてしまう以外にないということを秀吉はよくわかっていた。

p.479 天下に勇気と知恵を兼ね備えたものはわずかにおり、それぞれの国のぬしになっている。しかしながらその上に大気をそなえた者はいない。大気が天下を取らせるのだ。」と夜ばなしにいったが、子の大気は惜しげもなく人に領地をやれる精神であろう。

新史 太閤記

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